2018年4月17日火曜日

[ITmedia エンタープライズ] MacがARMを採用する理由


 AppleがMacintoshのCPUをIntelからARMに変更しようとしている、という話がまたささやかれ始めました。(※ニュースの出元は米BloombergのMark Gurman記者の記事

 Wiredの記事で書かれているように、この話(IntelからARMへの乗り換え)自体は、別に目新しいものではなく、ここ数年、あちこちでささやかれてきたことです。上の記事では、「インテルとの別離においては面倒な問題がいくつもある」と、アプリの互換性の問題を挙げていますが、私は、それでもAppleはやるだろうと思います。

 なぜなら、Macはこれまでに何度もプロセッサを変えているからです。

 初期のMac(1984年〜)はMotorolaの68000系、その後はIBMの「PowerPC」(1996年〜)に変わり、2006年からIntelベースになっています。Wiredの記事では「インテルとの10年以上もの“蜜月”」としていますが、68000もPowerPCも、10〜12年くらいで乗り換えていますから、別段不思議ではないのです。

 CPUを変えればバイナリ互換性は失われます。エミュレーション環境なども提供されましたが、あまり使い物にはならなかった記憶があります。また、32bitから64bitへの移行時や、OS 9からOS Xへの移行時も、アプリの互換性に大きな影響を与えましたが、スティーブ・ジョブズは断行しました。

 もちろん、昔と今とではMacのシェアも影響度も違いますし、何より今ではジョブズがいませんから、どうなるか分からない部分もあります。

 ただ、今でもmacOSのバージョンアップがあると、動かなくなるソフトがちらほらありますし、2017年にはiOSが完全に64bitに移行して、32bitアプリは軒並み動かなくなりました。

 基本的には「必要ならばやる」というのがジョブズの遺伝子であり、Appleの基本姿勢ではないかと思います。64bitに移行しても、32bitアプリとの互換性を極力守ろうとしているMicrosoftとは、このあたりが大きく違います。Microsoftは、ARM上でもWin32バイナリを動かそうとしています。

ARMは“遅い”のか?

 先のWiredの記事では、「ARMアーキテクチャの『力不足』」も問題になるとして、「計算能力という点で見れば(インテルのエントリーモデルの)『Core i3』か『Core i5』のローエンドモデル程度でしょう」というコンサルタントの声を紹介しています。

 しかし、「iPhone X/8」用の「Apple A11 Bionic」については、一世代前の「Core i7」に迫る性能を出していると紹介するサイトもあります。

 いずれにせよ、Appleが目指しているのはサーバ向けの演算能力バリバリのチップではなく、AIやグラフィックス処理などを複合した使い方を高速化していくという方向性でしょうから、単なる計算能力の比較では分からないということかもしれません。

 それに、いざとなれば、AppleはARMを独自に拡張したり、ARMと共同開発して高速化を図ることもできるでしょう。何といっても、AppleはARMの設立に関わっており、浅からぬ因縁があります。当時のAppleが開発中だった「Newton」用のCPUとして、高性能で低消費電力のCPUを共同開発したといわれています。

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